『あんた、何歳?』

たまたまホームページで見つけたアルバイト募集中の広告に応募して雇ってもらったこのこじんまりとした居酒屋で、成実さんが最初にはなった言葉は、なんの変哲もない質問だった。

16ですと答えると、じゃあ14歳差だね、と言われ、あまりの見た目の若さに『若いですね!』と声を上げてしまった。
どう見たって3つ4つ上にしか見えなかったから、そうとう童顔なんだな。
だけど、そう本気で信じたわたしに彼は、意地悪そうな笑みを浮かべて、こう言った。

『バカは何でも信じるんだね』と。

なわけないじゃん、そう言っておかしそうに笑う彼の第一印象は、腹黒王子。

どうして王子なんてつけるのかって?
だって、彼の容姿がそう言わざるを得ないから。

透き通るほど綺麗な肌、もしかしたらモデルをしてたんじゃないかってくらい小さな顔、なによりも、一重の切れ長な瞳にかかる黒髪がすごく妖艶だった。

その他にも、見れば見るほど圧倒される彼そのものに、実はシフトがかぶる前から見ていたなんて言えない。
いや、もうこの際だからそう思っていた自分を信じたくない。

初めてあった人を普通バカにする?!なんだこいつなんだこいつなんだこいつ!

モヤモヤを胸に抑えながらも、もう騙されない。そう誓って仕事をしていたわたしなのに、
結局その後二度ほど彼に騙されたのだった。