きっと、この世界の出来事は、すべて計算の上で行われているんだと思う。
朝は来るし夜も来る。
今わたしの住んでる日本だって、冬が終われば春になる。
わたしが何かに囚われてしまったのも、何かを手放してしまったのも、きっと仕方のないこと。

いつからだろう。
生きることが怖くなくなったのは。
死ぬことに恐怖がなくなったのは。

「…めんどくさい」
ポロリとこぼれたひとりごと。
と、同時に頭に落ちてきた雷のような激痛に、ぎゃあっと思わず眉をしかめた。

「…お前いい加減にしない?」
「ひぃっ!」

うわ。変な声でた。今の絶対女子の悲鳴じゃないよ。
だけど、仕方ない。だって、声の主も、雷のようなゲンコツも、相手が成実さんだったから。
恐る恐る振り返って、…振り返らなければよかったと後悔した。

「あれだけのミスをしといてめんどくさいってなんだてめぇ」

成実さんの顔は、いつにもまして黒いオーラで染まっていた。
ただでさえ低い声が一段と低くなって、肩が縮こまる。

「い、いえ、あの、今のひとりごと…」
「へえ、そうなんだ。こんなクソ忙しい仕事中に考え事してる暇があるんだね。へえ。」
「うわあぁぁ、ごめんなさい!!集中します!!!!集中!!」