星汰から再び連絡が来るようになって、どうしたらいいのか考えていた。
 兼吾の顔を見るのが怖くて俯いていると、スマートフォンの音が鳴った。
 電話に出るように言われ、画面を指でスライドした。

『やっと出てくれた』
「・・・・・・私達、もう別れたでしょ? 会うつもりなんてない」
『今でも忘れられないんだ』

 何度も忘れようとしたが、振り払おうとする度に思い出す。

「私、好きな人がいるの・・・・・・」

 星汰は嘘を吐いていると思っているらしく、信じていない。

「あっ・・・・・・」

 手にしていたスマートフォンを兼吾が横から取った。

『いつだったらいい? 今、どこにいる・・・・・・」
「俺の芽来に何の話があるんですか?」

 それまで話し続けていた星汰は驚いて何も言えなくなっていた。

「これから二人で指輪を買いに行くんです」
『指輪? ちょっ、それってもしかして・・・・・・』

 星汰の動揺を耳で感じ取り、言葉を続ける。

「前から決めていたことなんです」
『そんな・・・・・・』
 
 星汰はショックを受け、それ以上声を出せなかった。
 
「こういうことをされると気分が悪いんです。だからもう連絡してくるな! わかったか!?」 

 星汰は何度も謝り、慌てて電話を切った。
 初めて聞いた兼吾の怒鳴り声に圧倒されながら、スマートフォンを受け取った。
 日を改めて指輪を買いに行こうと誘われた。

「兼吾・・・・・・」
「俺はこれからもずっと芽来と同じ道を歩きたい。芽来は?」

 答えはとっくの昔から決まっている。

「私も・・・・・・」

 嬉しさのあまり声を震わせながら同じだと言うと、兼吾はにっこりと笑った。
 手を差し出されて彼の手に触れると、あたたかさが伝わった。
 そのぬくもりに笑みを浮かべながら、ゆっくりと歩き出した。
 それから一年後、彼氏から夫になった兼吾に買ってもらった指輪を見て、芽来は満面の笑みを浮かべた。