慧斗が自分の席に座り、身体を横に向けてこちらを見る。
この間帰りに話をして以来の会話だったので、それを今更思い出して耳が紅くなっていく気がする。
可愛いなんて、慧斗は色んな女子に言っているのだろう。
挨拶と変わらない。はずだ。
「今日家来ない?」
女友達に言うような軽さだった。慧斗がこちらを見ている。
いつもと変わらない。うん、いつも通り。
「家?」
「仔猫見に。赤い首輪してるんだ」
「え、行きたい」
「おいでおいで」
すっかりわたしは仔猫に心が捕らわれている。家ではお父さんが猫アレルギーなので猫は飼えない。