「良いも悪いも、溝中に夏菜子の話したの俺だから」

え、と更なるショックを受けてしまう。

「船川、夏菜子のこと好きだと思ってた……」

「まあ、好きだけど」

「何の話?」

急に後ろから低い声がかかって驚いた。振り向くと慧斗がわたしと船川を見下ろしている。

「お、はよう」

「おはよ。船川、美衣ちゃんのこと好きなの?」

「みいちゃ……?」

「違う。船川が好きなのは夏菜子の方」

はっと口を押えた。わたしは今重要なことを口にしなかったか。

船川を見ると、特に気にしてはいないらしい。表情に出ないだけなのか、それとも本当に考えていないだけなのか。