期待していたのは、『慧斗が離れる』という選択。

「あ、そんなことよりさ」

「そんなことって」

「この前の仔猫、やっと慣れたよ。今は一緒にベッドで眠れるくらい」

あ、現実に戻ってきた。慧斗は楽しそうに携帯を取り出して仔猫の画像を見せてくれる。

白い猫。目の色がくすんだ緑色で、それが少し慧斗の瞳の色と似ていた。

「可愛い」

「オスだよ」

「でも可愛い」

「うん。美衣ちゃんも可愛い」

さらりと言われた言葉に顔が紅くなるのを感じる。

「はは、やっぱり可愛い」

ふざけるようにして肩を少しぶつけられて、慧斗は笑った。
とても楽しそうだったので、わたしは怒るのを止めた。