守ってくれる大きな手

。♥︎。・゚♡゚︎・。♥︎。・゚♡゚︎・。♥︎。・゚♡゚︎・。゜♥︎。゚♡゚︎・
英澤市立病院

"郁美、あなたの近くに絶対助けてくれる人がいるから、あなたはもう十分がんばったよ、これからは人に頼りなさい"


「ん、………病院?」

「そうだよ」

「あ、………貝塚さん…」

「良かった、目覚めて」
「どうしてですか?」

「何が?」

「私、助けてもらったのに、貝塚さんにひどいこと言いました」

「そんなこといいよ、俺だって、感情的になって、他人のプライベート探ってしまったから」

「それは、父の事件のことですよね?」

「まぁね、俺、あの時の事件のことは一生忘れられないんだ。でも、君と苗字が違ったから気づけなくて。」

「はい、私、親戚の苗字をつけることにしたので」
「そっか…でもよかった。犯人は捕まったよ。連続殺人事件の二人組だった。ほら、前に一度あった時、あれは、たまたま君たちだったんだ、でも、君が強くて、悔しくてまた狙ったと言ってる」

「そうですか。やっぱり狙われてたんだ」

「うん、でももう大丈夫だから。あ、冴木さん、すごく心配してた。昨日、途中までは隣で君の手を握ってたんだけど、遅くなったから送って行った。連絡してあげな」
「はい。」

「じゃあ、俺、仕事に戻るから」

「あ、いろいろありがとうございました。」

「いえ、お大事に」

「ほんと……助かりました」

「…あのさ、」

「はい?」
「これから、俺のこともっと頼ってほしい」

「え?」

「同情だって捉えられたら誤解だ。助けたいって思った。お隣さんとして、君がほっとけない。それだけだ」

「………はい」


「……っっ、はぁ〜〜〜、ごめん、やっぱり、同情に聞こえるよな、本当に違くて、その…」
「大丈夫ですよ、わかってます。ありがとうございます。お仕事頑張ってくださいね」

「あぁ、」

もう一度、お大事にと伝え、恭太は病室を出た。

そこに、医者が来て、今回は検査の結果なんともないとのことで、その日に退院することができた。
翔子が電話の向こうで泣き叫んだことは言うまでもない。

。♥︎。・゚♡゚︎・。♥︎。・゚♡゚︎・。♥︎。・゚♡゚︎・。゜♥︎。゚♡゚︎・
郁美の体調もすっかり良くなった一週間後のこと


「郁美!」

「あ、翔子、どうしたの?」

「これ、」

「イルカショー?」

「そう、その日さ、親戚の法事とかぶっちゃって行けなくなったの。友達と行っておいで」
「うそ、うれしい!ありがとう。」

とは言ったものの、誘う相手がいないと思った郁美。友達がいないわけではない。ただ、休日にお出かけをしようと思える友達が翔子しかいなかった。

「あ……」

郁美が思いあったのが、例の警察官だった。どうして、彼の顔が思い浮かんだのか、その時は分からなかった。