「……単刀直入でごめんね。
明人さんから全部聞いたよ」


車へ乗るとすぐ、樹さんは口を開いた。


「そうですか……」

まぁ、明人さん1人で考えるとは思っていなかったから想定内だ。

きっとそのうち、夏目や輝。暁さんの耳にも入ることだ。

「正直、驚いたよ。
全部知っていたなんて」

……みんなは、私が知らないと思って隠してきたみたいだけどそれ以前にもう知っていたからね。

「まぁ、私もたまたま聞いてしまっただけなんですけどね」

自傷的に笑う。

「そうか……。でも話してくれて嬉しかったって明人さんは言ってた」

「…それなら、話してよかったです」

って、少しでも思えるかな。

「それともう一つ。確認、と言うか言っておきたいと言うか……」

樹さんは言葉を詰まらせる。


なんだろう…?






「陽葵、陽炎と仲良くやってるらしいね」





ドキリ、と心臓が鳴ったのは言うまでもない。

きっとみんな、陽炎のことは輝の事があったから知ってる。


………ダメ、なのかな?


でも、とってもいいところだよ?

心の中でいくら思っても相手には伝わらないとわかっていても心の中で抗議する。


「………………よかった」


けれどそんな心配は無用なようで、樹さんは運転席から後ろを向き、私の顔を真っ直ぐ見て微笑んだ。


………よかった?

どういう事だろう。


「………陽葵が、1人じゃなくてよかった」


樹さんはそう言うと再び顔を前に戻し、ミラー越しに私に口を開いた。


「陽葵が学校に行ってから、中山や榊に陽葵の様子を聞いていてね。
それで知ったんだ。
陽葵に、信頼できる人が出来て良かった。
もしずっとこのまま陽葵が閉ざしたままだったら学校に行かせた意味もないからね。
それに、陽炎はいいところだろ。
輝が行っていたところだ。
こちらの信用もとれている。
ちなみにいうと、輝の時の総長は今うちにいてね。輝は気づいてないけど」


あのバカ、と少し笑いながら、懐かしそうに言う樹さん。


なんだ……

全部全部、私のためだったんだ。

なんとなくは気づいていたが、ちゃんとした確信が持てなかった。

………私は恵まれているな。

こんなにも、私のことを思ってくれている人が周りにいたのに気づかなかったなんて。

それに、陽炎のみんなが認められていることが一番嬉しい。


「とっても、いいところです。
あったかいです」


その気持ちが素直に出てきて、自然と笑顔になれた。


そんな私を見て樹さんはまた笑った。