「ふぅ。」
スッキリしたのか、男は息をついて部屋を出ていった。
「あーあ、つまらないな」
……こんな毎日が続くなんて苦だ。
みんなといるときはもっと楽しかった。
どんな小さなことも幸せで嬉しくて。
みんなといればどんなこともできた。
………いつの間に、こんなに大事になったんだろう。
「…………会いたい」
たった2日で、なんて弱気な。
それに欲張りな私になったのだろう。
「…………会えない」
そう、それが現実。
そう自分に言い聞かせていた時だ。
部屋のドアが開いた。
「陽葵。お客さんだよ」
あいつはそう言って私の足の鎖をとると部屋から出した。
………え?
何。
どういう事。
「…………またすぐ迎えにいくから。
ほんの一時の時間を楽しんで来るんだな」
嗚呼、そういう事。
男が耳元で言う言葉をしっかりと頭の中に入れ、カバンを持つと部屋を出てそのままこの屋敷を出た。
最初からこのつもりだったんだ。
だから私の携帯も取らなかった、ってこと。
どうせ私は逃げられない。
それはわかっているよ。
「陽葵っ」
そこには昴が一人だけいた。
いや、みんなは少し離れたところで待っているみたい。
……隠れるの下手くそ。
「陽葵、血だらけ……なにが…」
いつもは落ち着いている昴が珍しく取り乱している。
「大丈夫。それにしても、よくここがわかったね」
そんな昴をなだめるように私は言う。
「…………みんなに協力してもらった」
昴はそう言うと私の存在を確認するように優しく抱きしめた。
協力……か。
にしてもここ、普通わからないと思うよ。
まさかGPSでもつけておいたのか、私に。