「一度くらいちょっと会ってやれば良いのに。」
にやにやして言う荻原に俺は曖昧に微笑んでおいた。
「はい、こんにちはー!」
その時教室のドアが開き中村先生が入ってくる。
「みんな揃ってるな?」
良かった。
荻原から解放される。
荻原が後方の席に戻ると俺は教壇の先生に眼を向ける。
と、その時一瞬、眼鏡を掛けた今泉さんと眼が合った。
「!」
直ぐに彼女も先生の方に向き直る。
「さぁ、センター試験まで2ヶ月切ってます。今日も張り切って行きましょう!」
一気に空気が切り替わる。
俺たちは一斉にテキストを広げた。
* * *