この感じ、嫌な気分だ…



「ごめん。そういうの興味ないんだ。」



俺は素っ気なく応えた。



「酒井っ!?」

ピカルが驚いたように俺を振り返る。



「そっか…ごめんね…」

女の子が俯く。



「聞いてくれて…嬉しかった。

…ありがとう。

さよなら。」



そう言って女の子は踵を返して駆け出して行く。



なるべく涙を見せないようにしてくれていた。

有り難い。



でも、気付いてしまった。

君が泣いていたことを。



その涙は硝子の破片のように…

俺を切り裂く小さな刃。



それでも俺はそれを甘んじて受け入れる。



なぜなら…



俺は彼女を好きになれる保証はない。

期待に応えられないかもしれない。



愛したけど応えて貰えない痛みは、恋をしたことがない俺にもきっと苦しいものであることは想像できる。



それならば、その痛みの半分を俺が引き受けて分け合ってあげたい。



愛を貰った代償に─



そう思えば期待に応えられない痛みなんて…



苦しくない、



苦しくなんてない─