土曜日。

朝、俺は何となく落ち着かない気持ちで家を出た。



約束は10時に個人指導室。

今泉さんと物理の勉強をする。



─ふたりで。



何でもない。

友達と勉強するだけじゃないか。

ピカルといつもしているのと同じだ。

何でもない。



冬の始めの透き通った朝陽。

電車で二駅揺られ、時間より5分早く個人指導室に着く。

と、そこには既に今泉さんと…





荻原の姿があった。





「よぅ、酒井。」

「おはよう、酒井くん。」

「荻原、どうしたの?」



俺の問いに荻原がにやりと笑い、今泉さんが少し俯く。





「俺、弥生子と付き合うことになったから。」





「え…」

「そんなわけで今日の勉強会俺も参加するから。」

「ごめんね、酒井くん。荻原くんがどうしてもって聞かなくて。」

「当たり前だろ。大事な彼女、他の男とふたりきりに出来ないでしょ。」

「……」