すると、

「あっ!」

と先生が小さく叫んだ。



「良いこと考えた。」

「何ですか?」

「今泉が力学教えて、酒井が電気教えて、お互い勉強したらいいじゃん。」



(え…)



「個人指導室使えるようにしといてやるよ。そうしなよ。」

「いや、でも…」



先週のことがなければ気安く受けるんだけど…

俺はともかく、彼女は居心地悪く感じるだろうな…

俺はちらっと今泉さんを見る。



と、思いがけず今泉さんが明るい声で応えた。



「いいね!やろうよ!ね、酒井くん。

私も電気出来るようになりたいし!」

「今泉もそう言ってるし。早速今週からやろう。

土曜の午前どうだ?」

「え…」

今泉さん、気にならないのか…?



するとやにわに荻原が

「あ!じゃあ俺も!」

と言った。



「荻原くんはダメ。力学普通に出来るでしょ。

それに私と志望校も被ってるし。ライバルには教えなーい!」

「えー!いいじゃんミオちゃん!」

「イヤー。」

今泉さんが荻原からあからさまにぷいっと顔を背けた。



「じゃ何?ふたりきりの個人指導室?

恋も芽生えちゃったりして?」



いひひと笑いながら面白そうに言う石野の言葉に、冷めた頭の中とは裏腹に無意識にドキッとしてしまう。



(何考えてんの、俺!?)