IDが送られてきてもスルーしとけばいいか…

そう思ったところでやにわにドアが開いて中村先生が顔を出した。



「はいこんにちはー。席着いてー。」


俺はいつもの4番目の席に座る。



と、こちらを振り向いていた今泉さんとまた眼鏡のレンズ越しに眼が合った。

彼女がふいと前を向き、視線が逸れる。



俺はバッグからテキストを取り出しながら再び溜め息を吐く。



(なんなんだよ、荻原。)

そこまで俺にリコちゃんを推す意味が分からない。

そんなにもリコちゃんを応援するほどふたりが親しいとも思わないのだが。



「この問題は有名私大の理学部でも頻出なのでー」

中村先生の声と共にチョークと黒板がぶつかり合う小気味好い音が教室に響く。



荻原とリコちゃんに振り回されている場合ではない。



(集中集中。)



俺は頭を一振りして必死にノートを取り始めた。