どうなっているのかは自分じゃ見えないけれど、意識してしまうと確かに両耳ともヒリヒリする。どっちかというと色白なせいで、日焼けをすると黒くなるよりも真っ赤になってその部分が熱を持つ体質だ。でもこればっかりは帰ってから冷やすしかないだろう。
 両手で耳を包み込む私を見ていたまっちゃんは、私の腕を掴むとクルッと自分と私の位置を入れ替えた。そしてさっきのペットボトルを取り出し、私の耳に当ててくる。痛みと同時に、冷たい感覚が耳の熱を奪う。

「さっき自分で買ったやつと両手で持って冷やしとけよ。火傷みたいになってるぞ」

 そう言うまっちゃんの身体で日差しが遮られ、まっちゃんより圧倒的に背の低い私はすっぽりと彼の陰に隠れてしまった。代わりにまっちゃんの背中がさんさんと照りつける太陽の光を一身に浴びている。

「え、これじゃまっちゃんめっちゃ暑くない?」

「まあ俺は日焼けした所でどうって事ないしな。その耳はちょっと痛々しいわ」

 この人が普段からこういうさり気ない気遣いが上手いのは実質歳上だからだろうか。いやでもたかが一年人生経験が長いくらいでそう変わるとも思えないし、だからやっぱりこれは彼の性格なんだろう。まだ知り合って数ヶ月だけれど、サークルメンバーとは毎日の様に顔をつきあわせているのでそれくらいは分かってくる。

「まっちゃんてば紳士的ー!よっ、男前!彼女泣かせ!失恋したての女子に安易にそういう事すると惚れられちゃうよー」

 確かまっちゃんには高校時代の同級生で、他大学に通っている彼女がいると言っていたはずだ。こう彼氏が全方位に優しいタイプだと離れてる彼女は大変だよねえ。
 両耳にペットボトルを当てたポーズのまま悪ノリして軽口を叩く私を見下ろしながら、まっちゃんは呆れた様な顔をした。

「はいはい、そんなつもり微塵も無いくせに何言ってんだ」