我が儘だと分かっている。
だけどここで手を離せば、遥希は戻って来ないかもしれないと思った。
遥希はあたしの手を握り、ゆっくり身体から引き離す。
あたしを絶望が襲い、涙が頬を伝った。
「絶対帰るから」
遥希は静かに言う。
静かに言うのだが、これ以上嫌と言わせない強さがあった。
「美咲、さっき言ったよな。
俺は最悪の事態になっても、お前を離すつもりはない」
「そんなの、いけないよ!」
いけないと分かりながらも、少しだけ安心した。
「たまには俺を信じろ!!」
遥希はそう言って、走るように出て行ってしまった。
あたしは遥希の出て行った扉を、突っ立ったまま見ていた。