「澪ちゃん、どうしたの? こっち来て座ろうよー」


そう言ってリイちゃんは入江くんの隣に座る。いつもの光景なはずなのに、なんでだろう? 今はなんだかもんにょりする。

私はそんな謎めいた気持ちを振り払うようにして、手に持ったトレイをテーブルに置いて、二人の前に座った。


「で、たこせんはどうやって作るの?」

「ちゃんと材料は持ってきたよ」


私は肩から下げていた綿のエコバックをトレイの隣に置いて、中のものを取り出した。


「まずはソース」


これはトンカツソースとケチャップ、それと少しだけウイスターソースをすでにブレンドしたもの。これをタッパに詰めて持って来ていた。


「それとマヨネーズでしょ。あとは天かす」


順番にそれらを並べたあと、もう一つメインのものも取り出した。


「そして忘れちゃいけない、えびせん」

「ああ、えびせんってこれかぁ。みりんせんべいみたいなやつだね」


エビが細かくされてるのか、エキスが入ってるのかわかんないけど、オレンジ色をしたえびせん。楕円形の大きいものをこの間スーパーの駄菓子セクションで見つけておいた秘蔵のものだった。

いつかひっそりたこせんを作ろうと思ってたけど、こんな公の場ですることになるとは思っていなかったな。