配置についてしばらくしたところで、あの男がテラス席にやってきた。

 すぐに逃げられるようにああいうところに座るのが癖なのかな? とあまりは思う。

 成田が、
「僕が行くよ」
と言って、水を持って行った。

 さすが、いつも通りの笑顔で対応していた。

 やっぱり、肝が据わってるなと自分も通常通りに仕事をしながら、あまりは、それを眺めていた。

 男はメニューを見ながら、時折、遠くを見て、なにか考えている風だ。

 男が見ているのは、海里の会社の方だった。

 だが、あるひとりの店員に目をとめた男は、立ち上がる。

 そのまま、近くの店員になにか言い、帰ろうとする。

 なんで? という顔を服部たちはしていた。

 すぐに確保に動こうとしたようだが、男が、ちょうどテラス席のテーブルを拭いていたあまりの前を通ったので、あまりは手を止め、訊いてみた。

「お客様、どうかされましたか?」

 すると、男は足を止め、あまりを見下ろす。

 額には、なにやらめでたい感じがするホクロがあった。

「いや、刑事が居るようなので」

 はっきり男はそう言った。