でもあのー、女装してたら、奥さん、戻ってこない気がするんですが、と思いながら、
「麻里子さんは、大崎さんがあそこでお店やってるの、ご存知なんですか?」
と訊くと、

「ええ。
 麻里子の住むトリノにもバーゲンのお知らせの葉書、メッセージ付きで送っているから」
と言ってくる。

 ……来るだろうかな、イタリアから飛行機に乗って、バーゲン。

 お兄ちゃんだったら、船旅になるから、着く頃には終わってるな、バーゲン。

 そして、大崎が逃げた妻に向けて、どんなメッセージを送っているのか、想像するのがちょっと怖かった。

「麻里子好みの服をそろえて待っているのに、なかなか来ないのよね」

 大崎は、困ったわ、というように言ってくる。

 海里が心配で覗きに行く気持ちがよくわかった。

「ところで、今日は海里と何処か行くの?」
と大崎が訊いてきた。

「えーと。
 食事はするなと言われたので、何処か食べに行くのではないかと思っているんですが。

 とりあえず、うちに来られるそうです」
と言うと、大崎は、あら、と目を輝かせる。

「なによ。
 じゃあ、食事作って待ってますくらい言えばいいじゃないの」