「一時は、麻里子を殺して私も死のうかと思ったわ。
 でもほら、そのうち、間男にも飽きるかもしれないじゃないの」
と乙女のような顔で大崎は言う。

 そ、そうですか……。

 そうですね。

「海里には昔随分世話になったから、いつか恩を返してやらねばと思っていたのよ。

 だから、あんた、さっさと海里と結婚しなさい」

 えーと……。

「海里と結婚して、私と姉妹になったら、お店の服もまけてあげるし。
 毎日、服コーディネートしてあげてもいいわよ」

「えっ、ほんとですかっ」
と思わず、差し出された大崎桐矢の手をつかんでしまう。

 おっと、男の人だったー、とあまりは慌てて手を離した。

 それに、この手を取るということは、海里と結婚するということだ。

 そんな、素敵な服につられてとか。
 人としてまずいだろう。

 そして、姉妹ではなく、兄妹のような気がするのだが……。

「麻里子が戻ってくるまで、私はあそこで店をやってるわ」

 いつでも来てね、と素敵な大人の女の顔で大崎は微笑む。