……なにやってるんだろう、この人。

 藪から出て来てもいない蛇を斬り殺してるように見えるんだが、気のせいだろうか。

 予約していたパンを買いがてら、心配して覗きに来た桜田は、遠くからあまりを眺めていた。

 自分をいびり倒していた草野が、
「あの、まだ売ってないんだけど……」
と力なく呟くように言っている。

 しばらく支社長のことで揉めていたようだが、そのうち、草野が、

「そういえば、秋月。

 あんたのとこに居るわよね。
 気をつけなさいよ、あのオバさん」
と厭そうに言い出した。

「ええっ?
 なに言ってるんですかっ。

 秋月さんは良い方ですよ。
 今日は新緑切ってくれたんですっ」

「……あんた、なに言ってんの?
 っていうか、あんた、とらやの羊羹好きなの?

 切って配るの、めんどくさいから余ってるわよ、うち」

 取りに来なさいよ、腐ったら、もったいないから、と草野が言っている。