「さては、此処に居らっしゃる皆さんは、支社長に気がおありなので。
 お茶を運んでいる私が気に食わなくて、喧嘩を売って来られたのですね」

「あの、まだ売ってないんだけど……」

 これから売るところだったらしい。

 買うのが早過ぎたようだ。

 でも、よくわかりました、とあまりは頷く。

「支社長は、やはりモテモテの悪い奴なんですね。
 女性の敵です」
と言い切ると、草野が、

「いや、ちょっと。
 勝手にわからないで」
と言ってきた。

「支社長、確かにモテるけど。
 社内の子に手を出したとかも聞かないんだけど」

 悪い人じゃないんじゃない? と草野は海里をかばい出した。

「いやでも、あの顔ですよ。
 陰で悪いことしてるに違いないです。

 妹の私が言うのもなんなんですけど。
 うちのおにいちゃんとか、結構なイケメンなんですが。

 爽やかな笑顔で、あいつ、悪ですよ、悪っ」

「いや……、あんたのおにいちゃん、知らないから」