「あら、そうなの。
 成田さんの方がよかったのに。

 今日はもう帰っちゃったの?」

「はい。
 でも、成田さんはいつもお店にいらっしゃるので、いつでもどうぞ。

 他にも、佐野村さんとか、イケメンの店員さんがいらっしゃいますし。
 夜はお酒も出してますよー」
と笑顔で言うと、

「……あんた、商売上手ね」
と草野が言ってくる。

「ところで、あんた、支社長にお茶運んでるみたいだけど。
 支社長とは、元から面識とかあったの?」
と上目遣いに見ながら訊いてくる。

 はい、と言ったあとで、あまりは声を落とし、身を乗り出して問うてみた。

「あの、もしや、草野さんは、支社長に気がおありとか?」

 すると、草野は、莫迦ね、と言う。

「気があるとかじゃないわよ。
 所詮、雲の上の人だしね」

「そうですか?
 意外と庶民的なところもありますよ。

 突然、ショボいこと言い出したりもしますしね」
と言うと、

「あんた、支社長に向かって、なに言ってんの……?
と言われた。