「もうこれだけしかないんですよー」
と言うと、ふーん、と言ったあとで、パンを見ながら、
「貴女さあ、此処で昼にパン売る以外は、お茶を煎れるだけなんですって?
なんで、わざわざ、うちの会社に雇われてんの?」
と訊いてくる。
ありゃ?
じわっとやな感じで来ましたね、とあまりは思った。
『あまりさん、その薮はつつかないでくださいっ』
と言う桜田ファミ子の囁きが耳許で聞こえた気がした。
「えーと。
お茶煎れるのは、販売のついでじゃないですか?
支社長がうちのお店の味を気に入ってくださってるみたいなので。
あの、うちの成田さんって従業員ご存知ですか?」
と言うと、あ、ああ……あのイケメンの、と主に突っかかってくるお姉様の一人が言う。
IDカードには、草野(くさの)と書いてあった。
スーツは総務らしく落ち着いた色合いだったが、化粧は派手めな感じだ。
「成田さんと支社長、仲良しなんで」
誰がだーっ、と叫ぶ成田の声が聞こえた気がしたが、とりあえず無視して、弁明する。
「その関係だと思うんですが、成田さんはお忙しいので、私が替わりに」
と言うと、ふーん、と言ったあとで、パンを見ながら、
「貴女さあ、此処で昼にパン売る以外は、お茶を煎れるだけなんですって?
なんで、わざわざ、うちの会社に雇われてんの?」
と訊いてくる。
ありゃ?
じわっとやな感じで来ましたね、とあまりは思った。
『あまりさん、その薮はつつかないでくださいっ』
と言う桜田ファミ子の囁きが耳許で聞こえた気がした。
「えーと。
お茶煎れるのは、販売のついでじゃないですか?
支社長がうちのお店の味を気に入ってくださってるみたいなので。
あの、うちの成田さんって従業員ご存知ですか?」
と言うと、あ、ああ……あのイケメンの、と主に突っかかってくるお姉様の一人が言う。
IDカードには、草野(くさの)と書いてあった。
スーツは総務らしく落ち着いた色合いだったが、化粧は派手めな感じだ。
「成田さんと支社長、仲良しなんで」
誰がだーっ、と叫ぶ成田の声が聞こえた気がしたが、とりあえず無視して、弁明する。
「その関係だと思うんですが、成田さんはお忙しいので、私が替わりに」