あまりが去ったあと、海里はいつも通り仕事を続けていた。

 すると、
「失礼します」
とやって来た寺坂が、おや? という顔をして笑う。

「どうしたんですか? 支社長。
 ご機嫌ですね」

 ……別に機嫌が良くなどない。

 あまりに、海里さんと呼ばれたからとか、その程度で。

 そんなわけはない、と意味もなく、キーボードの早打ちをする。

「ところで支社長」
と側に来た寺坂が声を落として訊いてきた。

「私、夕べは失礼なこととかしてませんよね?」

「……記憶ないのか?」

 泣き上戸なだけで、あのメンバーの中では、比較的冷静に見えてたのにな、と思う。