一緒にエレベータに乗ると、あまりは、へらへらと笑いながら、
「いい夜でしたねー、秋月さん」
と言ってくる。
少しいつものペースに戻っていた。
秋月は、そうね、と言ったあとで、
「あまり」
と呼びかけた。
「あんた、将来は、社長夫人になりなさいよ。
夫を社長まで押し上げて。
支社長夫人から、社長夫人にのし上がるのよっ」
「あのー、夫って誰ですか?」
とまだ酔っているあまりが訊いてくる。
それには答えず、あまり、と肩を抱き、
「犬塚海里を犬塚の社長にするのよ。
あんたの内助の功でっ。
私が支社に飛ばされたとき、笑った連中を見返すためにっ」
と言うと、ははは、とあまりは笑い、
「よくわかりませんが。
秋月さんのために頑張ります~」
と調子良く言ってきた。
……よくわかりませんがって、ほんとに適当だな。
気が抜けもするが、競争とかいう言葉から縁遠いところに居るこの間抜け面を見ていると、癒されないこともない。
支社長もそうなのかな、とちょっと思った。