高そうなマンションの下で、
「此処があまりの家だ」
と言う海里に、成田が、
「なんで知ってるんだ、お前」
と突っかかっている。
寺坂は桜田を駅まで送っていって、もう帰っていた。
「支社長、家に上がったことあるんですか?」
と秋月が問うと、ない、と言う。
「……送ってきただけだ」
「送ってきて上がらなかったのか?」
「だって、物騒だろう」
「……お前がか?」
と二人が話している。
上がらなかったのか、支社長。
立派だな、と思いながらも、
「では、お二人は此処でお帰りください」
と言うと、明らかに残念そうな顔をする。
「此処から先は私だけで大丈夫です。
鍵を開けなければならないので、あまりは叩き起こしますが」
「秋月さん、送りますよ」
と二人は言ってくれたが、
「いえいえ。
私、此処からタクシーで帰りますので。
それでは」
と言って、あまりを抱え、エントランスを入っていった。