「もう~っ。
 閉店しちゃいますよ。
 私が背負いますっ。

 乗せてくださいっ」
とあまりの側にしゃがみ、背中を向けると、桜田が、

「あっ、じゃあ、私が背負いますよ」
と言ってくる。

 自分の方が若いから力仕事をしなければ、と思ったようだが。

「いいから。
 人を抱えるのにはコツがあるのよ」
と言うと、寺坂が青褪め、

「……死体とか?」
と阿呆なことを言ってくる。

 酔ってるんだか酔ってないんだかわからない顔だが、まだ酔っているのかもしれない。

「子どもよ、子ども。
 男の子は子どものときから重いからねえ。

 コツを覚えないと、腰を痛めるから」

 もう寝たろうか、と家に置いてきた我が子たちを思う。

 海里があまりを背中に乗せてくれたが、そのために触るのさえ、恥ずかしそうだった。

 よっ、とあまりを背負って立ち上がると、男二人は残念そうにこちらを見ていた。

 ほんと。
 残念だったね、君たち。

 ジャンケンででも決めれば、どちらかには、ちょっとだけの幸福が訪れたのに。