家に入るとすぐに料理を始めた朱子さん。

「あ、ずっと思ってたんですけど」

「な、なんですか?」

「スーツ着たまま寝ましたよね?
シワついちゃってますよ?」

「あ、着替えてきます。」

完全に忘れていた。

クリーニングに出さないといけないかな。

着替えてると包丁の音とか

フライパンで焼いてる音とかが

聞こえてくる。

久しぶりだ。

高校生の時までは母がこうして

朝ごはんを作ってくれる音が

毎朝聞こえてきてた。

今になってこの音が幸せだと感じる。

久しぶりに母に電話でもしてみようかな。

父が元気なのは会社でいつも見ているけど

専業主婦である母の姿は

正月以来見ていない。