テントに戻ると、クラスメイトがいつになく代わる代わる話しかけてきてくれた。


「大丈夫だった?」

「さっきの、あれ…やばかったね」


もう大丈夫だから、と笑って答えていると…


そのうちの1人が、

「麗香もあからさますぎるっていうか…あの子最近変なこと言ってたんだよ。自分の恋をいつもなずなちゃんが邪魔するんだって」

そう言った。


「え?」

首を傾げる私に、


「接点なんて、ないのにね。おかしなこと言うよね」


そう言ってテントから出ていった。

ちょっと待って…
私がいつ恋の邪魔をしたの?

記憶になさ過ぎて、悩み出した私を見て、隣で聞いていた樹里が、

「ねえ、麗香の被害妄想にしても。おかしな言動じゃない?いつも…とか」


小声で話しかけてきた。

樹里の言葉に私がまだピンときていない様子を見抜いてか、


「だから…記憶がない間にも麗香となずなの間に何かあったんじゃないの?」


樹里が耳打ちしてきた。


確かに…
私の記憶がある限り、彼女と私の間に接点なんてなかった。


彼女が私を目の敵にするのは、今回のことだけじゃないのかもしれない。

深刻に思い悩んでいると、


「それより、なずな」

樹里の顔がなぜか満面の笑みに満ちている。


「なずなの走りっぷり、最高だったよ!あんな動いてるなずな、初めて
見たよ。もうあの表情、かっこよすぎ」


ご機嫌な樹里を見て、私は力が抜けた。

「珍しくテンション高いね」

樹里が掴んだ腕にすごい力がこもっている。

「だって、なずないつも脱力感たっぷりだから。レアなもの見た感じがね」

レアなものって…

「人をツチノコ扱いするんじゃないよ」


樹里の頭を軽く小突いたところに、


「なずなちゃん、意外だった。すごいじゃん」


「凛々しい顔がすんごいよかった」


テントに帰ってきたクラスの女子が次々と来て、私を囲んだ。

人に囲まれてる。
この感じ、久しぶりかも。


バスケの試合でゴール決めたときの感じ。


頑張ることで、人に喜んでもらえるなんてね…

違うな…本気じゃないと響かないんだ。

私ったらかけっこで熱くなっちゃった。恥ずかしい…とか思った自分が恥ずかしくなった。