「ねえ、他に何か思い出せない?」


樹里の腕を掴んで、聞いた私に樹里は首を横に振った。


「今までに体験したことがないいような、変な感じ。思い出せない、というかある部分がとんでるような」


樹里も自分の腕を抱きしめて、顔をこわばらせた。



「保健室で、オウジと私が何かあったのかな…?」


「そもそも、オウジって…一体何者?」


樹里の問いかけに、


「催眠術師?」

そう答えると、


「こわっ」

樹里は顔をひきつらせた。


私達の常識では処理しきれないことが起こっているというのに。


大半の人がそれに気づかずに、何もなかったかのように日常を送っている。


運動場へ出ると、

「あ、なずなちゃん」


海晴くんがたっていた。


「大丈夫?これ、お見舞い」


渡されたのは…


「メロンパン?」

あ、そういえばパンで何が好きか聞かれた…


「あ、ありがとう」


海晴くんが走ってるとこ見たかったな…

なんて、ちょっと乙女なこと思っちゃった自分を殴りたい心境になっていると。


「ちょっと、久保川。あんたが大体、中途半端な行動とるから、変なやっかみでなずながこんな目に合うんだよ」


樹里の剣幕はすごいし、私、そんなか弱い女子じゃないし。


「だ、大丈夫だよ。私、丈夫に産んでもらってるし。わざとじゃないかもだし…」


慌てて止めると、


「…ごめん…」


海晴くんはその場を離れた。