星菜ちゃんが走った後ろ姿を見送ると、今度は私の番だ。

スタートラインに並ぶと、なんだか緊張する。
小学生の頃と、変わんない…この感じ。

ピストルの音と同時に走り出した。


なんだかドキドキしてちょっとテンションが上がってきて…


みんなの声援も聞こえて、私の足が久しぶりに思い切り地面を蹴っていた。

最後の直線の先に、ゴールテープが見えてそのまま走り込んだ。

ゴールテープを切ってスピードを緩めたとき、後ろから思いもよらないほどの衝撃が来た。

足で踏ん張る間も無く、地面に体を打ち付けた。

後ろから走ってきた子がぶつかって、私は転倒してしまったらしい。

体を起こして座ると、

「ごめん、大丈夫?」

後ろから声をかけられた。


振り返ると、確か海晴くんと同じクラスの、木内麗香だった。


派手なグループの中の1人で、背が高くスタイルがいい。

長い髪を耳にかけて、一瞬、笑った…?

気のせい?

「あ、だい…じょうぶ」


なんだかよくわからないけど、この人とこれ以上話したくない。

避けるように、立ち上がろうとした時、足に痛みが走った。


「痛っ…」

立ち上がれなくて、またしゃがみこんだ。


「は?大げさ…」

あざ笑う木内麗香を、見上げた時。

「大丈夫?手当してもらいに行ったほうがいいよ」


星菜ちゃんが、駆けてくれた。


「何突っ立ってんの?どいて」

木内麗香をにらむと、私の体を支えて立ち上がらせてくれた。


木内麗香は、パッと後ろを向いて足早に歩いて行った。


星菜ちゃん、強い。

可愛いのに、強い。

なんかキュンってしちゃう。



気のせいか周りもざわついていたけど、進行役の人が仕切り直し、次のグループがスタートした。


「今のって…不自然だよね。わざと…とか、まさかね」


星菜ちゃんが声をひそめて言った。


私は、苦笑いして星菜ちゃんに支えてもらいながら保健室へ歩いた。


華奢な体で支えてもらって申し訳ない…

「なずなちゃん?どうしたの?」


声がする方を見ると、海晴くんが驚いた顔で私を見ていた。