よっぽど、肉に飢えてるのね…

海晴くんの瞳の輝きを見ていると、なんだか切なくなるわ。


「あの日記帳のさ…名前、何だと思う?」

コップにウーロン茶を注ぎながら尋ねた。


海晴くんが顔を上げた。

前髪が目にかかって少し細めながら私を見る。


「あ、そうだ。これ…」

私はポケットからピンを取り出して、海晴くんの髪に留めた。


海晴くんの一直線の眉毛が顔を出す。

ああ、なんか、すごい男の子なんだなって意識してしまいそうになる自分を今無償に殴りたい。


されるがままの海晴くんがまた可愛くて、ちょっと笑いそうになりながら…


「月、桜、o.t」

真面目にかんがえてるふりをしてしまった。


「うーん。おうすけとか?」

「おうた、とか?」

「おうせい?」


二人同時にため息をついてしまった。


「いくらでも思いつくけど、しっくりこないね」


肉を焼く海晴くんを見ながら、我に返る。


「まあ、でもこの状況も変だよね」

「なにが?」


不思議そうな顔をする海晴くんの顔を見て、


「私達がこんな焼肉してんの学校の誰も知らないよ?」

笑うと、


「ああ、そうだね。なずなちゃんがこんなに肉食って誰も想像しないだろうね」


そう言ってさわやかに笑われた。


「不思議なことばかり起こるね…」

煙で目を細めながら、つぶやくと、


「でも、そのおかげで今焼肉にありつけてる」

海晴くんの言葉に、2人で爆笑した。