「それで…どうして久保川くんはこっちに歩いてきてるんでしょうか?」


振り返ると、久保川くんがコーラ片手についてきている。


「今日は…これだ」


紙を広げて得意げな顔で見せてきた。


「何…これ?え?号外?店長の特別価格?え?なに、この価格破壊は?」


広告に飛びついた私に、久保川くんはにっこり笑って、

「カルビ、ホルモン、豚トロ、タン」

指さして読み上げていく。

私は夢中で目で追っていく。

久保川くんが自信たっぷりに、


「焼肉できるね」

と、にっこりほほえむ。

このほほえみ…

もしかして、

「またうち?」

眉をひそめて尋ねた。


すると、言い訳する子どもみたいに、

「だって、僕んち母さんがダイエット中でさ。連日、豆腐ハンバーグ、厚揚げステーキ、ついに昨日はキャベツインロールキャベツという謎な食べ物がテーブルに置かれてて。僕、貧血になるよね」


本当に辛そうに、ため息をついた。

想像してみても、かなり…キツイ。
特に、久保川くんは太ってるわけでもないし。


細マッチョ、って感じかなぁ。

程よくついた筋肉、腕の血管…

あ、イケナイ、イケナイ。

またチャッカリ観察しちゃった。


「ま、たしかに…キャベツインロールキャベツ?ちょっときついね」


私が同感したところで、


「そういうことだから…」


久保川くんは大きな歩幅で歩きだした。


そういうことって、どういうこと?

私は、久保川くんの背中に問いかけながらついて行く。