「少なくても、情報はあるわけだから。名前がわかれば何か新たに思い出せるかもね」

久保川くんがそう言うと、笹中さんが瞳をキラキラさせた。

わぁ、こんな顔させる男は一体どんな人だったんだろう。


沈みそうになった気持ちを、また高めて…

「そうだね、うん。とりあえず名前、なんだっけO.T?桜?」

そう尋ねると、


「あと、月くん」


私の声の後に、少しトーンが高くなった笹中さんの声が追ってきた。


「月…」


「Tは月のT?]


「だとしたら、Oは?」


「イニシャルだったら、桜を『おう』って読む?」


「つき…おう…?」


たぐり寄せたいところだけど、何も響いてこない。


「うん…意外と難しいね」

私達はしばらく考え込んでいると、だんだん無言で3人向かい合う、おかしな集いになってきた。


あまりの出なさに、

「とりあえず、家で考えてくる?」

久保川くんの意見に賛成した私と、笹中さんは頷いて立ち上った。