「水沢ちゃんが井原の彼女になってもいいの?」
井原の彼女……そんなの無理。
黙って一度だけ首を横に振る。
「もう、これ以上は言わない。
お前が好きじゃないって言い張るならそれでいい。
だけど、これだけは忘れるな。
水沢ちゃんはあの女とは違ってすっげぇいい子だ。だから、取られても文句は言えねぇぞ」
それだけ言うとカーペットから立ち上がり、ドアの方へと歩いていく。
でも、何かを思い出したかのようにクルリとこちらを振り返り
「そういえば、水沢ちゃん好きな人いるっぽかったよ。ホントのとこは知らないけどね」
とだけ言って出ていった。
俺はしばらくその場から動けなかった。
誰だよ……真心の好きな人って。
そのまま、ベッドに倒れ込みさっきの事は忘れて目を閉じ寝ようとするけど、気になって眠れない。
ああーーっ!もう誰なんだよ。
なんで、こんなに気になるんだ。
これじゃあ、俺がこの気持ちの正体を嫌でも認めなきゃならねぇじゃねぇかよ。
将司のやつ、全部分かってて言いやがったな。
まったく、ほんとにウザイやつだ。
次会ったときに肩パン一発くらわせてやる…。
─────…俺は真心が好きなんだ。