「わかったわかったから!!頼むからそんな今にも俺を殺しそうな勢いの顔で見んなって!」



急に焦り出して、ヘヘッと笑っている将司。



「……」



俺が何も言わないでいると、将司は俺に柔らかい視線を送ってきた。




「さっきのことだけど嘘だから。

まあ、二人で話したのは事実だけど深い意味はないし、俺は京香ちゃん一筋だし?」




やっぱ、山口なんじゃねぇかよ。


俺はホッと胸をなでおろした。
あれ……俺はなんでこんなにも焦ってたんだろう。



ていうか、今も将司と真心が二人きりで話してたことについてイライラしてるし。




「それより、楓希。

もういいかげん、自分の気持ちに気づけば?」



「気持ちってなにを…」



「お前は気づいてないだけで水沢ちゃんのこと好きなんだよ。それもヤバイぐらいに」




俺が真心を好きだと?



絶対に違う。
俺はそんな感情とっくに捨てたはずだ。


それはお前が一番知ってるだろ?将司。




「俺はもう恋なんてしない」



「楓希、恋はするもんじゃない。落ちるもんなんだ。

どれだけ、決意してても知らぬ間に恋に落ちてる。お前のその相手が水沢ちゃんだったんだ」




恋は落ちるもん…?


違う、もう俺はあんな思いはしたくない。


人のことを好きになったから俺は酷く傷つけられたんだ。




「ほんとはもう自分でもわかってんだろ?」



「……」



「水沢ちゃんはあんなことするように見えるか?」



「……見えない」




真心は真っ直ぐで自分の意思をちゃんと持ってて曲がったことは許さないようなヤツ。



そんなヤツがあんなことするわけない。



そんなの分かってるけど、認めたくない。



この気持ちを認めてしまえば、俺はまた傷つくかもしれない。