な、なにこの展開は……?



「ふ、ふぅちゃん…?」



「さっきのこと、絶対分かってねぇだろ」



耳元でそう言う彼の声は風邪のせいでいつもよりも低く掠れている。


それが、新鮮で耳に吐息がかかる度に余計に耳がジンジンと熱くなっていく。



「わ、わかってるってば…!」




「なら…触んないでよ。

理性のストップ効かなくなるだろうが…」



「ただでさえ、ヤバイのに」と言いながらあたしの肩に顔を埋める。



脈打つ鼓動がドクン、ドクン、と音を立てながらスピードを増していくのが分かる。



きっと、今あたしの顔は異常なまでに真っ赤だと思う。


鎮まれ…あたしの心臓。


こんなんじゃあ、ふぅちゃんに聞こえちゃうから…。




「じ、じゃあ…出ていくから離れて?」




ここから早く退散しないとあたしの心臓が持たない。


もう、心臓が破裂寸前。


こんな甘いふぅちゃんせこい。




「もう手遅れ。離さないし」



「え?」



ぎゅっ、とあたしを抱きしめる力を強める彼。



「ふぅちゃん、熱のせいでおかしいよ」



しんどすぎて人格変わっちゃったのかな?


顔を少しあげれば、キスしてしまいそうなほど近くに彼の綺麗な顔がある。


その瞳はさっきまではとろーんと甘い瞳をしていたのに今は色っぽい大人の瞳をしていた。



「熱のせいじゃない。真心のせいだから」



「意味わかんない」




「真心のことが頭から離れない。どうしてだろうな」




見つめ合ったまま、そんな事言うからますますあたしの鼓動は加速していく。