「その汚い手…離してくんない?」




その声には聞き覚えがあって、不覚にも胸がドキンと跳ね上がった。



その声の主は息を切らしていて、はぁはぁ…という荒々しい息が聞こえてくる。



室井くんも彼の存在に気づき、後ろを振り返る。




「誰だよ、お前」



「…さっさとその手離せよ」




彼は一歩一歩あたしたちに近づいてくる。


その彼の額には汗が滲んでいて、急いできてくれたのかな?と思った。




「俺の質問に答えれば?」



「じゃあ、その前に俺のいうことも聞けよ」




彼の表情はひどく怖いもので、室井くんを思い切り鋭い目つきで睨んでいる。



いつもなら、絶対にこんなに感情を表情に出すような人じゃないのに……どうしてなの?



ダメ…泣いちゃダメだよ…すぐ泣く女は無理だってこの前言ってたじゃん。




「はいはい。離せばいいんだろ」




室井くんは彼の言葉通りに掴んでいたあたしの手を離して体から離れた。



そのせいで、さっきまで室井くんの体で隠れていたのに

あたしが着ていたファスナーが下ろされている無残な姿があらわになる。