「嘘なんかじゃ……もういい。一緒に来い」




そう言うと、あたしをプールサイドまで連れていき、そのまま無理やり上がらされて人気の少ないところに連れてこられた。




浮き輪はプールサイド付近に放置されている。



怖いのに…こんなときに限って声が出ない。



お願い…誰が気づいて。




「なぁ、俺のこと覚えてるよな?」



「忘れるわけないでしょ!?この最低男!!」




あたしの恋心ズタズタに踏みにじった最低な男なんだから。




果歩がさっき言っていた“あの人”というのはあたしをここまで連れてきた彼…室井勝也(むろいかつや)




中学が一緒であたしが好きだった人……


高校もわざわざ県外にしたのも彼が理由の一つだったりもする。



もう二度と会わないって思っていたのに…神様は本当に意地悪だ。