あたしは焦っていた。

新しいクラスになって1ヶ月、勇に新しい世界が出来た事にまた不安を感じていた。
目の届かない事がどれだけ怖い事なのか、あたしは知っていた。

勇はモテる。

17年間みてきたあたしから見ても、勇は完璧だった。



「勇ー…!!ごめん、古典の教科書貸して!」

クラスに行って、こんなことを言うだけでどれくらいの女の子が傷つき、あたしに嫉妬するのだろうか
女の子とは嫉妬する生き物だ、ということはあた自身が身をもって感じる事だ。

勇の本名は、岡崎勇(おかざきいさむ)歴史好きのおじさんが尊敬する某人物から有り難く頂戴した名前らしい。

あたしは所謂、勇にとっての「幼なじみ」ってやつだ
大概異性の幼なじみ何てものは年頃になり、どちらかに恋人が出来た時点で曖昧なものになり、遂には単なるご近所さんって事になるのがオチなのだが…あたしたちの場合は違った。

あたしはしつこかったのだ。