「そろそろ戻らなくちゃ、ありがとう付き合ってくれて」

「こちらこそ。
危ないから送っていくよ」

「やっぱり優しいね、君は。
大丈夫だよ、すぐそこだから」

ありがとうと言い、彼女は席を立った。
だんだん小さくなっていく彼女の背中をぼーっと見送る。

「本当にありがとう、春からよろしくね」

階段を降りる手前、振り返って大きく手を振りながらそう叫んだ。
それだけ言うと少し足を早めて階段を降りて行く。

「よろしく、葵」

さっきまで恥ずかしくて呼ばなかった名前。
恥ずかしさのせいか、この寒さのせいか、耳まで赤くなっているのが自分でもわかる。

可愛かったな…

そんな事を思いながら空を見上げた。


満点の星空の下、それが俺たちの初めて出会った場所。