都会から少し離れたこの地域は夜になると星が綺麗に見える。
空気が澄んでいる冬は尚更。

散歩がてらに昔よく星を見に言っていた丘へ向かった。
そこは、長い階段のせいか人はあまり来ない穴場。

けれど今日は違う。
一つだけあるベンチに一人の人影があった。

シルエット的に女の人…?
でも、こんな時間に女性が一人でなにを。

まあ先客がいるなら場所を変えようかと思い引き返そうとした時、その人影が振り返るのがわかった。

「あれ、お客さん?」

凛と透き通るような声はやはり女性のもので、そんな問いかけをする彼女は、頭上で光っている星よりも輝いて見えた。

「大丈夫?」

「…え?ああ、大丈夫。星が綺麗でつい目を奪われてた」

「だよね、ここ人もあんまり来ないし星が綺麗に見えて穴場だったんだ。まさか君みたいな好青年が来るとは」

くすくすと上品に笑うその姿はどこか儚げで今にも消えてしまいそうだった。