帰宅するために電車に乗り、夕焼けの中の教室で見た君の笑顔を思い浮かべていた。

そしてその笑顔に鼓動が早くなり、胸が締め付けられる。

この気持ちがどんな意味を持つのか、わかっている。
だが、この気持ちを認めるわけにはいかない。

《先生と生徒》

変えられない関係。
越えられない壁。

「はぁ…」

思わず出たため息で数日前の事をふいに思い出す。

『あ!先生今ため息したでしょ!!』

君は僕を指さしながら大きい声で話す。

『ため息すると、幸せ逃げちゃうんですよ?
だから、ため息禁止です!吸い込んでください!』

満面の笑みで話す君。

言われたとき同様、僕は少しだけ電車の中で息を吸い込んだ。