少し冷たい秋風が、誰もいない教室に吹き抜ける。
そんな風を肌に感じながら、窓から夕焼けに染まったグラウンドを見つめる。
外からは部活をしている生徒や帰宅している生徒の笑い声が聞こえる。
「葉山先生!! さようならー!」
「はい、さようなら!」
廊下を通る生徒達に声をかけられ、振り返り応える。
笑顔で見送り、もう一度グラウンドを見る。
視線はソフトボール部。
いない…
ガラッ
『あ、先生!! 何してるんですか?』
「特に何もしてないよ」
さっきまでここから眺めていた君の質問に笑顔で応える。
「忘れ物?」
『はい。問題集忘れてて… 練習中に思い出したんで取りにきちゃいました!!』
君はヘヘッと笑いながら肩をすくめる。
『先生も黄昏はそこそこにして、早く帰ったほうがいいですよ!! 』
「じゃあ、そろそろ帰ろうかな。ほら、君も練習に戻りなさい」
『はーい!! じゃ、さよならっ!!』
笑顔で手を振りながら教室を出ていく君の背中を見つめ、僕は秋風が入らぬよう窓を閉め3年1組の教室を後にした。