クルミ:「みなさんっ!今日はクッキー作ってきたんでよかったらどうぞ!」



「おおおお!!くるみちゃんサイコー!!」


「いええええい!」



私の周りに集まる部員さんたちとは対照的に、

帰ろうとする、神谷くん



クルミ:「神谷くんっ、クッキー…」



「神谷はいつもあんな感じだから気にすんな!
俺らが神谷のぶんまでもらうし!」



落ち込む私を励ましてくれる。


でもここで引きさがっちゃダメだ。


クッキーを1つ持って、帰ろうとする後ろ姿を追いかける。


「くるみちゃん?!」



カホ:「くるみ…ファイトっ(小声)」



______



クルミ:「神谷くん!これっ!よかったら…」





ハル:「…いらん」





…バカみたいだ私



ほんとは、神谷くん私のクッキー楽しみにして部活に来てくれたんじゃないかって、

心のどっかで期待してた。



泣きそうなのをこらえて、


クルミ:「でもっ…余っちゃうから…」



ハル:「あのさぁ、俺にかまうなや。ほっといてくれ」




視界がじんわりとにじむ。これ以上、なにも言えないよ…



遠ざかっていく足音だけが、やけに鮮明に響いた。


もうだめかもっ…ひくっ…必死こらえた嗚咽が小さくなってしまった。


そのとき__


ファサッ



頭に、柔軟剤と汗の香りが混じったパーカーがかけられた。


「泣き顔みんなにみられちゃうよ。こっち」


そう言って手を引いてくれたその声は



1年のバスケ部 清水 直哉(シミズ ナオヤ)くんだった。