「あ…」


しまった。
無言だったのに声を発してしまった。


「どうした」


松田先生がこっちを見る



「…この曲、」


「曲?」


先生の車から流れてきた曲
英語だけど、かっこいいんだ。


「この曲、大好きなんです」



「…俺も好きだ、この歌」


あたしが小さい頃
この曲を聞いて元気をもらっていた


あたしの過去を拭い去るかのように
この曲を何度も何度も聞いていた。


「先生も聞くんだ、洋楽なんて」


「あー。まぁな。俺、この歌手が好きなんだ」


そういう先生は
どこか悲しげな顔をしていた


スピーカーから流れてくる大好きな曲を聞いていたらいつの間にかあたしの家に着いた。


「ありがとうございます。
あ、先生この材料お願いします」


ペコッと少しだけ
頭を下げて家に入った。