家を出て、迷うこともなくただひたすら歩く。駅までの道、春風が私の体を冷やす。
駅のホームでは、真新しい制服に身を包んだ生徒達が、今か今かと電車を待っていた。鏡を見ながらメイクを直すギャル、いかにも女の子を品定めしてます!みたいな男子生徒達。みんなの楽しそうな声が私の心をかき乱す。そんな心踊らせているみんなの中、一人私は、じっくりと髪の毛から肩、スカートへと手を滑らせる。確かに心は『朋子』なのに。顔や体はもちろん、素振りや態度など、会ったことも見たこともない『ほたる』という女の子になっていた。