急に…怖くなった。


お母さん、帰ってくるの…?


台所からおばさんが食器を洗う音がすることだけが唯一、私とコウちゃんの間に音を与えていた。



「ふっ…ひっぐ……」

涙で歪んでいく視界の先にコウちゃんがびっくりして目を見開いている顔が見えた。


お父さんみたいに。
お母さんも気がついたらいなくなってたらどうしよう。


小さい私は不安で胸がいっぱいになった。


カラン


ピンクのクレヨンがゴロゴロと私の所に転がって来た。


「一緒に遊ぼっ!」


コウちゃんはそう言って、乱暴に、不器用に私の手にクレヨンを握らせた。