「本当に、わからないの…?ボブで、深雪よりも少し身長が低い子だよ、声が高くて、ほら、この子」
携帯を慌てたように操作して、私に画面を向ける。画面の中で、黒髪ボブの女の子が楽しそうに笑っていた。
「素敵な子ね」
どうしてこの写真を見せられたのか私には理解できなかったが、とりあえず素直な感想を口に出した。
「深雪、嘘でしょ?嘘だよね?」
ギュッと握られた手が、痛かった。
縋りつく彼女の瞳が、痛かった。
「どうしたの?今日はなんか不安定よ、あなた」
落ち着いて、と宥めるようにその手を撫でれば彼女は声を荒らげて、私の手を弾いた。
「あなた、普通じゃないのよ!おかしい!どうして友達のこと忘れちゃうのよ!あんなに仲良かったのに!変よ!」
触らないで!最後に金切り声を残して、去っていった彼女を、私は鮮明に覚えている。